記憶の中で生きていける

 

昨日無事に曳舟の店の最終日を迎えました

遠方から遥々とやって来てくださったり

お酒やプレゼントや労りの言葉をたくさんたくさんくださったり

それはそれは嬉しい夜になりました

尽きるほどの冥利もないのに蝶よ花よと甘やかしてもらって身が縮こまる思いですが、このような優しい人々に恵まれたことは大したことのない私の人生史にくっきり刻まれた勲章です

ありがとうございました、お元気で

私に会いに来てくれたひとは、みんなどうか毎日楽しくていつでもご機嫌でいられますように

 

さて、華やかで楽しかった夜と打って変わって本日は、日頃の疲れが祟ったのか少しぐったりしています

気圧でしょうか、ひとしごと終えて腑抜けただけかもしれないね

この半年ほどずうっと何かが張り詰めていた自覚はあって、それが漸く終わったからでしょう

久しぶりにぐっすり眠れたし、身体は怠いけれど

とても元気です

辞めた店の話をするのはどう頑張っても悪口染みてしまうのであんまりしないけど、やっぱりそれだけのことはそれなりにあって、

けどね、誰も彼もしあわせになってくれと心から願える夜が増えたのはそこにいたから、いられたからでもあるんです

終わりには必ず意味があるように出会いにもやっぱり意味があると信じたいしね、良いことも嫌なこともあったけど、後悔は一粒だってしていないからどうか皆さん息災でと心から思う今日でした

 

明日からまたしばらくしたら、

新天地の話でもしましょうと思います

それでは今夜もおやすみなさい

 

 

 

 

 

 

 

ひとでなしのこい

 

先日は初めてお会いしたお客様から文章を褒められて実は結構かなり有頂天だったんだけど、

表情筋はもはや毎度のことながら筋肉痛らしかったので、仕方ないから心の中で飼ってるダンサーにOne night carnivalを踊らせておきました

氣志團のことずっと好き、聴くと元気になるから

いちばん好きな音楽はちょっと昔まではほんとのところBUMP OF CHICKENだったんだけど、

今も変わらず好きなのは神聖かまってちゃん

アーバンギャルドです

サブカルチャーに生きて死ぬと決めてからもう随分と経ちました

お元気ですかそれを決めた十五歳の私

今も私はサブカルクソ女のままですよ

どうか安心してねとよく思います

私は取り止めのないことばかり話すのが好きだから令和になっても相変わらずブログなんてものをつらつら書いています、そのうち文通とかやり出すかもね

ところでそのお客様と江戸川乱歩の話になって、私も乱歩のことはすごく好きなんだけど一等好きなのは彼の作品じゃなくて残した言葉というか逸話のほうで、乱歩は一生分の恋を十五歳のときに使い尽くしたような気がしたと言うんです

初めてその一文を目にしたのは奇しくも私も十五歳のときで、そのときの衝撃といったら無かったし、この先あと何千年生きたってそんな言葉を私は生み出せないだろうし感じることすらできないだろうと何となく悟ってしまったものでした

そういえば全然関係ないようで関係あるような話で、よくある設問の「恋と愛の違い」について

私は「燃え尽きるのが恋、灰になるまでが愛」

だと常々言ってるんだけどその根っこになったのは乱歩のそれなんだよなあ、とぼんやり思い出したよ、なんだか無性に楽しくて不思議な夜だったね

 

また会えたら良いな、きっと楽しい夜になるから

 

 

雑音

 

努力でどうにもならないことが出てきた時や理不尽な出来事が起こった時に、

もっと頑張ってみようとか負けないぞとかその手の情熱を燃やせたのはやっぱり若かったからなんだろうと最近よく思う

 

自殺しても何も美しくない年齢になってしまったとはよく言ったもので、生きていく術をそれなりに蓄えてしまった今となっては鬱陶しいことは適当に避けられてしまうし雑な扱いには雑に返すし合わないなと思えばその場を静かに去ることもできる。認められたいだとか報われたいだとかの承認欲求のようなものは小銭よりも価値がないと知ってしまっているし馬鹿は死んでも治らないのだと理解できてしまっているから。

そうやって大人になってゆくのかもしれないけれど、そのせいか絶望というものと無縁になる。

絶望を持たない命は儚く無い、だからあのような言葉が生まれたんだろうなと染み染み思う。

冒頭のようなことがあったとき、舐めた真似しやがってクソが死んじまえとは一瞬思っても、わざわざ思い知らせてやるとはもう今更思わない。

思い知る事などないと知っているから。

私が、大半の大人がそうやって小狡く緩く生きていけるように、馬鹿は馬鹿のままでも何とかなって生きていけるものだと知っているから。

馬鹿のままで生きてきて、これからもそうやって生きていくのであろう馬鹿に、理解できる日などきっと来ない。

仮にそんな日が来たところで「あー遅かったね」とUber eatsの到着予定時刻がずれた時と大差ない感想しか自分からは出てこないだろうことも、

やっぱり知っている。

そうやって知っていることが増えていくうちに、とっくの昔に別れた元カレよりも遠い存在になった希死念慮くん、私がまだ少女革命ウテナを観ても意味がわからなかった子供の頃に出逢えていたらと思わずにはいられない。

その頃に出逢えたならきっと私はうっとりしながら王子様の手を取るように屋上の手摺を乗り越えて空にハグして地面にキスしていたと思う。

今はもうそれが、死なんてものが別に王子様でもイケメンでも救いでも無いことを知っている。

何もかも残念でならないけれど過ぎたことなのでどうでもいいかなと思わなくもなくて、

ああほんとうにつまんない、ちっとも美しくない大人になっちゃったなあと嘆息しつつ、取り止めのない日記を終える。

 

 

夢を見た後で

今朝は不思議な夢を見て起きた

中学を卒業して以来一度も会っていない女の子の夢で、その子は絵に描いたような優等生で、私は正反対の人間だったからほとんど接点なんか無かったんだけど、何故か中二の夏から卒業後しばらくまでメールのやり取りを毎日していて、

その主な内容は私が創作した物語を彼女に送り、

彼女から感想と次の話のお題や希望が来るというよくわからないものだった

生身ではほとんどまともに会話した事もなく、

クラスメイトの範囲内で世間話をした程度だったのに、何故かメールのやり取りは途切れなかった

毎日毎日飽きもせず私は彼女のための物語を作って送り続け、彼女はそれを楽しみに待ってくれていて。

思えば私の最初の読者が彼女だったんだと思う。

その女の子は、さらさらの黒髪とはにかんだ時に見える八重歯がかわいい子だったことを今も覚えてる。

メールのやり取りが始まったのも突然で、ある日急に知らないアドレスからメールが来ていて開くと「◯◯ちゃんからアドレスを聞いて送りました、エリコです」って内容で、度肝を抜かれたものだった

あの優等生の、あの子だよね?ほとんど話した事ないのに何だろう。

と、酷く戸惑った夏の日。

何がきっかけだったかといえば、私が他のクラスメイトに話していたちょっとマイナーな漫画を彼女も読んでいて、その漫画の話しているところををたまたま耳にして私に興味をを持ってくれたらしかった。

そこからどうしてその毎日物語を書いて送る、

電子の交換日記のようなものが始まったのかは今は全く思い出せないけど、それは私にとってとても楽しくて、そして青春の秘密だった。

私と彼女は毎日学校が終われば眠るまでそんなメールをしていることは誰にもおくびにも出さなかったし、学校ではほとんど他人のままで、ただのクラスメイトのままで過ごした。

毎日メールでは延々と会話しているのに学校ではお互い素知らぬ顔でいることが、それが何だか尊い秘密のような、優等生で人気者の少女をこっそり独り占めしているような、不思議な気持ちがしたものだった。

生身ではほとんど話したこともないのに、学校では何かと作らされるチームや班でも一緒になったことなんてないのに、卒業まで一度たりとも「友達」だと周りに認識されたこともないのに。

何故か私たちは大学生になったら一緒に京都に住もう、ルームシェアをしようなんて幼い約束までしていた。

何だったんだろう、あれは。

叶うことなんてきっと無いとお互いわかっていたし、何の期待も恐らくしていなかったし、なんならまともに会話をしたこともそれほど無いのにルームシェアって何だよって感じなのだけれど、

ずっと約束をしていた。

楽しみだね、そうなったらこんなことしたいね、なんて話を幾度もメールでした。

面と向かってそんなこと、一瞬も話したことないのにね。

 

彼女とは卒業してすぐの春休みの終わりがけのある日に、一度だけ、二人で本屋に出かけたことがあった。

雨のぱらつく日で、傘を差して自転車に乗って、

本屋と待ち合わせ場所だった母校を往復しただけの、カフェにも入らずあまり会話もせずの、

謎の小一時間のお出かけだった。

そのとき彼女はやまざき貴子先生の「っポイ」という漫画の話をして、それが大好きだから読んでみてと私に言った。

私は雨の音のせいで彼女の話してくれるあらすじやキャラクターのことはほとんど聞き取れなかったけれど、今度読んでみるねと言って別れた。

ふたりでの最初で最後のお出かけがそれで、

それから少ししてメールのやり取りも終わった。

私が携帯電話を壊して、連絡先がわからなくなったから。

彼女のメールアドレスはそれこそ共通の友達とかに聞けば良かったんだろうけど、私のなかに

彼女とのこの謎の関係はバレちゃいけないという思いがあったし、在学中だったら何か理由をでっち上げてうまくバレずに連絡先を聞けたかもしれないけれど、生憎もう卒業済みで、進路もバラバラだった。

電話番号は知らなかったし、お互いの家にも行ったことが無かった。

だって「友達」じゃなかったから。

だから、それっきりだった。

 

それから今日までずっと会ったこともない彼女が夢に出てきた。

突然現れた彼女は私に会いに東京まで来たと言って、ふたりで飲み屋に入り、あのときのことを覚えてる?と当時のメールのやりとりを反芻して、笑い合った。

在学中に一度だってそんなふうに話したことはないのに、この歳になってこんな話をするなんてね、とお互いに笑った。

ふとまどのそとを見ればいつのまにか夜が明けそうになっていて、そういえば何かあったの?だからわざわざ私なんかに会いに東京に来たんじゃないの、と声を掛けると

彼女が「うん、あのね、本当はね」と口を開いた。

そこで、目が覚めた。

彼女が何を言いたかったのかは聞けず仕舞いで、そういえばあの春の唯一のお出かけの日、

別れ際に彼女が同じように「あのね、本当はね」と言いかけて、やめたことがあったのを

ぼんやりと思い出した。

あの日も今日の夢も、あなたは何が言いたかったのかな。

私がいつもその先を聞けないのは、やっぱり私たちが友達じゃないから、なのかな。

 

ねえでも私ね、ほんとはね

期待もしてなかったし、信じてもいなかったけど

 

一緒に、京都に行きたかったんだよ。

 

 

起き抜けのふわついた頭で、そんなことを、思った。

 

 

丘の花は黄色にしよう

 

今日から日記を書く事にしました

勤め先の夜のお店が登録しているポケパラとかいう情報サイトでも日記を書かなきゃいけないんだけどそっちはいつかそう遠くない未来のどこかでお店を辞めたら必然消えてしまうものだから自分から消さない限りは消えないものに書きたくなったんだよね

Twitterはとても便利で愉快なツールだけれど何かを書き残すには文字数が足りないし見たくない人の目にも見えてしまうものだから、こうして隔離されていてまあ見てもいいよってひとにしかアクセスできないインターネットの海底の端っこみたいなスペースは逆に居心地が良いかもしれない

少なくとも私にはぜんぜん息のしやすさが違うんだよね、わかるかな、わかんないかもね

でもわかんなくてもいいよべつに

誰かとわかりあう事がすべてって生き方はしてきてないんだよねごめんねあんまり優しくなくて

それはそうと、こういう初めての日記ってたぶん自己紹介とかした方がいいのかもしれないんだけどあんまりそういうの得意じゃ無いから軽くてどうでもいい感じのやつでもいいかな、

 

わたしの名前は葵です、お店やインターネットでは大体それ以外は名乗ってなくて、もちろん本名じゃないんだけど、じゃあその名前どっから来たのってよく聞かれてて、毎回めんどくさくてね、てきとうに嘘か本当かわからないようなことを言ってるんだけどたまには本当のことを言うんなら

この名前は、もうこの世界のどこにもいなくなっちゃった古い知り合いの名前です

好きな食べ物は大体これもてきとうに言ってるんだけど、て言うかてきとうなことしか言ってねえなこいつって思うかもだけどね、

真実なんて呆気ないものだし知ったところで得もしないからほどほどがちょうどいいよねと思ってるから今後もそのつもりでよろしくね

とりあえずパンと珈琲が好きです、魚と餃子とラーメンとお酒も好きです、あと食べ物じゃないけど煙草と音楽と本と賭け事と綺麗な生き物と柔らかい生き物と頑張り屋さんなひとと優しくて優しいから損しちゃうようなひとが好きで、

ほかのものはだいたいふんわり嫌いです

ふんわりだから好きになることもあるけどあんまりないかもしれません

お仕事は夜のお店のおねえさんをしてるけど、

実は物語を書くお仕事をしています

あとカフェのおねえさんも週末だけしています

最近ずっと海が見たいです

だんだん書けることがなくなってきたな、自分のことって難しいよね

自分のことじゃ無いことはいくらでも書けてしまうんだけど、職業病ってやつなのかもね

それじゃあ今はこの辺で

もしも私とくだらない話がしてみたくなったら

そのときは夜のお店に来てください

って一応言っておこうかな

 

やっぱりそろそろ海が見たいね